売掛金・買掛金・未収入金・未払金

第1章:4科目の全体像——「営業取引か否か」が分岐点

4科目はすべて「代金の受け渡しが発生時点では完了していない取引」を記録するための科目です。分類の最大のポイントは、その取引が会社の主たる営業活動(本業)から生じているか否かという1点に集約されます。

📥 売掛金(Accounts Receivable)

区分:資産(流動資産)

定義:本業の商品販売・役務提供による売上代金のうち、まだ回収されていない金額

発生源:営業取引(本業の売上)

貸借対照表:流動資産の「売掛金」欄

📤 買掛金(Accounts Payable)

区分:負債(流動負債)

定義:本業の商品仕入・原材料購入・外注費のうち、まだ支払っていない金額

発生源:営業取引(本業の仕入・外注)

貸借対照表:流動負債の「買掛金」欄

📥 未収入金(Other Receivables)

区分:資産(流動資産)

定義:本業以外の取引(固定資産の売却・保険金請求・補助金等)で生じた、まだ入金されていない金額

発生源:営業外取引・非経常的取引

貸借対照表:流動資産の「未収入金」欄

📤 未払金(Accrued Liabilities)

区分:負債(流動負債)

定義:本業以外の取引(固定資産の購入・経費の未払い等)で生じた、まだ支払っていない金額

発生源:営業外取引・経費の未払い

貸借対照表:流動負債の「未払金」欄

科目区分発生源B/S上の位置代表的な発生取引
売掛金資産(流動)営業取引(本業)流動資産商品・製品の販売、役務提供による売上
買掛金負債(流動)営業取引(本業)流動負債商品・原材料の仕入、製造外注費
未収入金資産(流動)営業外取引流動資産固定資産の売却、保険金、補助金、有価証券売却
未払金負債(流動)営業外取引・経費流動負債固定資産の購入、設備費・経費の未払い

業種によって「本業」の内容は異なります。小売業・製造業・サービス業では商品・製品・役務の販売が本業なので、その売上代金は売掛金、仕入代金は買掛金です。一方、固定資産の売却・保険金の受取・補助金の受給などは本業外の取引なので、未収入金を使います。「この取引は売上に関係するか」という問いが最初の判断基準です。

第2章:売掛金—商品・サービスの売上に伴う未回収債権ー

売掛金の定義と性質

売掛金は、会社の主たる営業活動である商品の販売・サービスの提供によって発生した売上代金のうち、まだ入金されていないものです。B/Sの流動資産に計上され、通常は1年以内に回収されることが前提です。

売掛金の仕訳例

売掛金

550,000

売上

500,000

売上高(税抜き)

  

仮受消費税

500,000

消費税(10%)

普通預金

549,560

売掛金

550,000

売掛金消込

支払手数料 

440 

 

 

振込手数料(先方負担の場合は売掛金を減額)

→ 振込手数料を差し引いて入金された場合、差額440円を「支払手数料」または「売掛金」の減額として処理(どちらでもよいが、自社ルールを統一する)

売掛金管理の実務ポイント

  • 得意先元帳で残高管理:売掛金は得意先ごとに残高を管理する。会計ソフトの補助科目(得意先コード)を使って得意先別に集計し、残高一覧表を月次で作成する
  • 入金消込の徹底:入金があったら即座に該当の売掛金を消込む。未消込の残高が積み上がると、実際の債権残高と帳簿残高がズレていく
  • 回収条件の確認:得意先ごとの締日・支払日(例:月末締め翌月末払い)を台帳化し、入金予定日を管理する
  • 長期未回収債権への対応:一定期間(通常6か月〜1年)回収できていない売掛金は「貸倒懸念債権」として、貸倒引当金の計上を検討する

第3章:買掛金—商品・サービスの仕入に伴う未払債務ー

買掛金の定義と性質

買掛金は、会社の主たる営業活動に直結する仕入・外注費等のうち、まだ支払っていないものです。B/Sの流動負債に計上されます。

業種買掛金が発生する取引の例注意点
小売業仕入先からの商品仕入代金の未払い分仕入先ごとの支払条件(月末締め翌月20日払い等)を台帳化する
製造業原材料の仕入・製造に直結する外注加工費の未払い外注費が「製造外注」なら買掛金、「販管費の外注」なら未払金の場合がある
建設業工事の下請け外注費・材料費の未払い工事原価に直結する外注費は買掛金(工事未払金とも呼ぶ)
サービス業業務に直接使用する消耗品・外注費の未払い間接的な経費の未払いは未払金で処理する場合が多い

買掛金の仕訳例

仕入高

300,000

買掛金

330,000

4月分仕入(税抜300,000円)

仮払消費税 

30,000 

 

 

消費税10%

買掛金

330,000

普通預金

329,560

振込金額

支払手数料 

440 

 

 

振込手数料(自社負担の場合)

第4章:未収入金—営業外取引の未回収債権ー

未収入金の定義と性質

未収入金は、本業以外の取引や非経常的な取引によって発生した、まだ入金されていない金銭債権です。売掛金と同じく資産(流動資産)に計上されますが、発生源が営業外取引である点が決定的な違いです。

未収入金が発生する取引の例発生のしくみ注意点
固定資産(車両・機械・不動産)の売却売却代金の決済が後日になる場合。固定資産の売却は本業でないため売掛金は使わない売却損益の計上と未収入金の計上を同時に行う
有価証券の売却株式・債券等の売却代金が約定日から2〜3営業日後に入金されるケース約定日基準か受渡日基準かを会社のルールで統一する
保険金の請求火災保険・損害保険等の保険事故発生後、保険金が入金されるまでの期間保険金額が確定した時点で未収入金を計上する
補助金・助成金の交付決定交付決定通知を受けたが、入金はまだの状態(確定払い方式の補助金)概算払い・確定払いによって計上時期が異なる
敷金・保証金の返還請求退去後に貸主から返還される敷金・保証金返還額が確定した時点で敷金から未収入金に振り替える
従業員への立替金の精算会社が立て替えた経費を従業員から回収する前の状態少額・短期のものは「立替金」科目を使う場合もある

未収入金の仕訳例

未収入金

550,000

車両運搬具

1,500,000

車両売却

減価償却累計額 

1,200,000 

固定資産売却益 

250,000 

売却益

未収入金

1,000,000

雑収入

1,000,000

補助金収入を収益計上

→ 補助金の会計処理は「総額法」(収益計上+対応費用を費用計上)が原則。「純額法」(対応資産から控除)も認められるが、自社で方針を統一する

第5章:未払金—営業外取引の未払債務ー

未払金の定義と性質

未払金は、本業以外の取引や経費の支払いで発生した、まだ支払っていない金銭債務です。買掛金と同じく負債(流動負債)に計上されますが、発生源が本業以外である点が決定的な違いです。

未払金が発生する取引の例発生のしくみ注意点
固定資産(機械・設備・PC等)の購入資産を受け取ったが代金の支払いが翌月以降になる場合。固定資産の購入は通常の仕入でないため買掛金は使わない分割払いの場合も支払い予定額全体を未払金で計上し、支払うたびに減額する
広告・システム開発費等の経費Webサイト制作費・システム開発費・コンサルタント費用等、単発の発注に対する未払い継続的な取引先への仕入的な性格の支払いは買掛金の場合もある(自社ルールで統一)
給与・社会保険料の未払い月末時点で計上は行うが支払日(翌月25日等)がまだの場合。「未払費用」を使う場合も多い未払金(確定した債務)と未払費用(継続取引で発生した未払い)の区分に注意
クレジットカード決済の未払いクレジットカードで購入したが、口座引き落としがまだの状態引き落とし日に未払金が消滅する。カード明細ごとに購入科目(消耗品費・交際費等)に振り分ける
法人税・消費税の未払い決算後に確定した税額のうち、まだ納付していない分「未払法人税等」という独立した科目を使うのが一般的。「未払金」でも可

未払金の仕訳例

機械装置

2,200,000

未払金

2,200,000

生産機械購入(税込)

消耗品費

33,000

未払金

33,000

事務用品購入

→ 翌月に口座から引き落とされたとき:借方「未払金」33,000 / 貸方「普通預金」33,000

未払金 vs 未払費用——最も混同しやすい2科目

⚠️ 未払金と未払費用の違い

「未払金」と「未払費用」は非常に混同されやすいですが、厳密には異なります。

科目性質
未払金確定した債務。請求書が届いており金額が確定している請求書のある固定資産代金・クレジットカード利用分
未払費用発生している費用だが未確定・未請求の部分。継続サービスで期間に帰属する費用の未払い当月分の給与(支払日は翌月)・期間対応の借入利息・リース料の月割り

実務上、小規模な中小企業では未払費用も未払金でまとめて処理するケースが多く、税務上も特に問題はありません。ただし月次試算表の正確性を求める場合は区別することが望ましいです。

第6章:4科目の使い分け判断フロー

実際の仕訳場面で迷ったときは、以下のフローに沿って判断します。

資産側(未回収の債権)の判断

Q
この未回収の金銭債権は、自社の主たる営業活動(本業)から生じているか?
A

YES(本業から発生)→ 売掛金
例:商品・製品・サービスの販売代金の未回収

NO(本業以外)→ 未収入金
例:固定資産売却・保険金・補助金・敷金返還

Q
(売掛金と判断した場合)手形で受け取ったか?
A

YES(手形)→ 受取手形
手形の期日まで「受取手形」で管理

NO(振込・現金)→ 売掛金のまま
入金時に売掛金を消込む

負債側(未払いの債務)の判断

Q
この未払いの債務は、自社の主たる営業活動(本業の仕入・外注)から生じているか?
A

YES(本業の仕入・外注)→ 買掛金
例:商品仕入・原材料費・製造外注費の未払い

NO(経費・設備購入等)→ 未払金または未払費用
例:固定資産購入・経費・クレジットカード利用分

Q
(買掛金と判断した場合)手形で支払うか?
A

YES(手形)→ 支払手形
手形の期日まで「支払手形」で管理

NO(振込・現金)→ 買掛金のまま
支払い時に買掛金を消込む

第7章:よくある混同ケース10選

取引の内容誤りやすい科目正しい科目理由
固定資産(PC・エアコン)を掛けで購入買掛金❌未払金✅固定資産の購入は本業の仕入でないため未払金。PCが10万円未満で消耗品費処理する場合も同様
会社所有の車両を売却し、代金は翌月入金売掛金❌未収入金✅車両の売却は本業の販売活動でないため未収入金
業務委託先(デザイナー・ライター)への報酬が未払い買掛金❌(場合による)未払金✅(または買掛金)本業の仕入に直結する外注なら買掛金も可。販管費性の外注費は未払金が適切。自社の業種・取引の性格で判断
補助金の交付決定を受けたが未入金売掛金❌未収入金✅補助金は本業の売上ではなく営業外収益(雑収入)に対応する債権なので未収入金
クレジットカードで旅費交通費を決済(引落し待ち)買掛金❌未払金✅クレジットカード利用額は旅費や消耗品等の費用に対応する未払金
社会保険料(会社負担分)の翌月末納付前未払金❌(厳密には)未払費用✅(または未払金)継続的な役務提供(雇用)に対応する費用なので厳密には未払費用。実務上は未払金でも可
保険料(年払い)の前払い分未収入金❌前払費用✅保険料を前払いした場合、翌期以降に対応する費用は「前払費用」(資産)に振り替える
返品を受けたが、まだ返金していない場合未払金❌売掛金の貸方修正または返金負債✅返品を受けた場合、売上の減額(売掛金の貸方修正)を行う。返金が翌月以降になる場合は「預り金」または「返金負債」を使う
建設業の工事代金(完成・引渡し後の未回収)未収入金❌完成工事未収入金✅(または売掛金)工事の請負は本業なので売掛金(建設業では「完成工事未収入金」という特有の科目を使うことが多い)
IT企業がソフトウェアライセンスを販売し、代金が未回収未収入金❌売掛金✅ソフトウェアライセンスの販売がその会社の本業なら売掛金。本業か否かは業種・事業実態で判断する

例えば「有価証券の売却」でも、証券会社であれば本業の売上なので売掛金を使います。不動産業者が不動産を売却する場合は本業なので売掛金、製造業者が遊休不動産を売却する場合は本業外なので未収入金です。科目の選択は「その会社の主たる事業が何か」を起点に判断する必要があります。

第8章:受取手形・支払手形との関係

売掛金・買掛金の決済手段として約束手形が使われる場合、「受取手形」「支払手形」という科目を使います。

科目性質発生の場面消滅の場面
受取手形資産(流動資産)売掛金の決済として手形を受け取ったとき(売掛金→受取手形に振替)手形の期日に入金されたとき(受取手形→預金に振替)、または割引・裏書したとき
支払手形負債(流動負債)買掛金の決済として手形を振り出したとき(買掛金→支払手形に振替)手形の期日に口座から引き落とされたとき(支払手形→預金から減額)

受取手形

550,000

売掛金

550,000

売掛金を手形で回収

→ 手形の期日に入金:借方「普通預金」550,000 / 貸方「受取手形」550,000

⚠️ 受取手形・支払手形は「約束手形の廃止」動向に注意

2026年度末を目途に、一般社団法人全国銀行協会等が紙の約束手形の廃止を推進しています。今後は電子記録債権(でんさい)や振込への移行が進む見込みです。受取手形・支払手形の残高が今後減少していく場合は、電子記録債権(資産)・電子記録債務(負債)という新たな科目への対応も必要になります。

第9章:消費税申告・決算処理上の注意点

消費税の課税区分

科目消費税の課税区分注意点
売掛金課税売上に対応(消費税込み金額で計上するのが一般的)税込経理と税抜経理で仕訳が異なる。税抜経理では売掛金に消費税込み金額を計上し、仮受消費税を別途計上
買掛金課税仕入に対応(消費税込み金額で計上するのが一般的)輸入取引(逆輸入)は輸入消費税の処理が別途必要。非課税仕入(土地・有価証券等)は買掛金でなく未払金の場合も
未収入金取引内容による(課税・非課税・不課税が混在)固定資産売却は課税。補助金・保険金は不課税。有価証券売却は非課税(売買差額が課税売上割合の計算に影響)
未払金取引内容による(課税・非課税・不課税が混在)固定資産購入は課税仕入。給与・社会保険料は不課税。保険料は非課税。一括で処理せず明細ごとに課税区分を確認する

決算時の処理——残高の整合性確認

  • 売掛金の実在性確認:期末の売掛金残高と得意先への残高確認書(確認状)を照合する。長期滞留売掛金(回収不能リスクの高いもの)は貸倒引当金を計上する
  • 買掛金の網羅性確認:仕入先からの請求書と買掛金残高を照合し、計上漏れがないか確認する。翌期初に入荷した商品の検収日と請求書の日付を確認し、期末在庫と買掛金の整合を取る
  • 未払金の計上漏れチェック:期末時点で到着していない請求書(固定資産・経費)がないか確認する。特に3月・12月決算前後の取引は注意が必要
  • 消費税申告との照合:売掛金の期首・期末残高変動は消費税の課税売上高に影響する。消費税申告書の課税売上高とP/Lの売上高、売掛金の増減が整合しているか確認する

🔴 税務調査でよく指摘される売掛金・未収入金のポイント

  • 実在しない売掛金の計上:架空売上による売掛金の計上。期末に売上を前倒し計上して翌期に取り消す「益出し・益隠し」
  • 長期滞留売掛金の放置:回収不能になっているにもかかわらず売掛金として計上し続けることで、貸倒損失の計上時期をコントロールする行為
  • 売掛金と未収入金の混用:本業の売上を未収入金に計上する(課税売上割合の計算に影響する可能性がある)
  • 消費税の計上もれ:売掛金残高に対応する仮受消費税が正しく計上されているか確認する

第10章:まとめ

  • 4科目の分類の起点は「本業(主たる営業活動)の取引か否か」——これが唯一の判断基準
  • 売掛金・買掛金は「本業の売上・仕入」から発生する債権・債務
  • 未収入金・未払金は「本業以外の取引(固定資産売却・補助金・設備購入・一般経費等)」から発生する債権・債務
  • 「本業か否か」の判断は業種・会社ごとに異なる。業種の主たる事業が何かを起点に考える
  • 固定資産の取得は「未払金」、固定資産の売却代金は「未収入金」——買掛金・売掛金を使わない
  • クレジットカード決済の未引落し分は「未払金」
  • 補助金・助成金の未入金は「未収入金」——「売掛金」は使わない
  • 「未払金(確定した債務)」と「未払費用(期間対応の未払い)」は厳密には異なるが、実務上は未払金でまとめる場合も多い
  • 売掛金・買掛金を手形で決済する場合は「受取手形」「支払手形」に振り替える
  • 消費税の課税区分は取引内容によって異なる。未収入金・未払金は一括処理せず、明細ごとに課税区分を確認する
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石水 秀治(いしみず しゅうじ)

大手監査法人にて17年間、製造業・建設業を中心とした財務デューデリジェンス、IPO支援、内部統制構築支援に従事。2025年に石水会計事務所を開設。中小企業・起業家に寄り添うアドバイザリー型の支援を提供している。