資本準備金と利益準備金——会社法が積立を義務付ける理由

決算書の純資産の部を見ると「資本準備金」「利益準備金」という項目があります。この2つは名前が似ているため混同されがちですが、発生源も会社法上の役割も異なります。本記事では、資本準備金と利益準備金の違いと、会社法がなぜ配当のたびに準備金の積立を義務付けているのかを解説します。

資本準備金と利益準備金の違い

資本準備金は、株主からの出資(払込金額)のうち、資本金に組み入れなかった部分です。増資や会社設立の際に、払込金額の一部をあえて資本金にせず準備金として積み立てることで生まれます。いわば「株主からの出資」を財源とする準備金です。

利益準備金は、会社が稼いだ利益(繰越利益剰余金)を財源として積み立てる準備金です。配当を行う際に、会社法の規定に基づいて強制的に積み立てられます。株主からの出資ではなく、会社自身が生み出した利益が財源になる点が資本準備金との根本的な違いです。

区分資本準備金利益準備金
財源株主からの払込金額会社が稼いだ利益(剰余金)
発生する場面会社設立、増資剰余金の配当
合わせて「準備金」として資本金の4分の1に達するまで積立が必要

なぜ会社法は準備金の積立を義務付けているのか

会社法は、株式会社が剰余金の配当を行うたびに、配当額の10分の1を資本準備金または利益準備金として積み立てることを義務付けています。ただし、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達している場合は、この積立義務はなくなります。

配当のたびの積立額 = 配当額 × 1/10
(資本準備金+利益準備金の合計が資本金の1/4に達するまで)

この制度の趣旨は、株主への配当という形で会社の外部に資金が流出しすぎないよう、一定の財産的な基盤を会社内部に強制的に留保させる点にあります。準備金は原則として配当の財源にできないため、会社の財務的な安全弁としての役割を果たします。

会計処理のイメージ

例えば、資本金2,000万円の会社が準備金の合計200万円の状態で100万円の配当を行う場合を考えます。資本金の4分の1は500万円なので、準備金合計200万円はまだ500万円に達していません。この場合、配当額100万円の10分の1にあたる10万円を、利益準備金として積み立てる必要があります(配当の財源が繰越利益剰余金であるため、通常は利益準備金として積み立てます)。

仕訳(イメージ)借方貸方
配当の支払い繰越利益剰余金 1,100,000円未払配当金 1,000,000円
利益準備金 100,000円

実務で誤解されやすいポイント

  • 準備金の積立義務があるかどうかは、資本準備金と利益準備金の「合計額」と資本金の4分の1を比較して判定する(利益準備金だけを見て判断してはいけない)
  • 準備金は原則として取り崩して配当に充てることができない(資本金への組み入れなど、会社法上定められた手続きが必要)
  • 中小企業では、配当を行う機会自体が少ないため、準備金の積立義務を意識していないケースが多い。配当を検討する際は必ず確認が必要

準備金を減らす(取り崩す)にはどうするか

準備金は会社の財産的基盤を守るための制度であるため、取り崩すには会社法上の手続き(株主総会の決議、債権者保護手続きなど)が必要です。準備金を資本金に組み入れる、あるいはその他資本剰余金・その他利益剰余金に振り替えて配当可能な状態にする、といった対応が考えられますが、いずれも一定の手続きを要します。この点は次回以降取り上げる剰余金の配当規制・分配可能額の回とあわせて理解しておくと実務に役立ちます。

準備金の積立・取り崩しの判断はご相談ください

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石水 秀治(いしみず しゅうじ)

あずさ監査法人にて17年間従事(IPO支援4社)。2025年7月、山梨県甲府市に石水会計事務所を開業。国の認定経営革新等支援機関として、中小企業の会計・法務体制構築を支援。