予算管理の始め方——「去年の数字に何%」からの卒業

多くの中小企業の「予算」は、前年実績に一律で数%を上乗せしただけの数字になりがちです。これでは予算が単なる願望の数字になり、月次で実績と比べても何の気づきも得られません。本記事では、なぜ「前年比〇%」型の予算から抜け出す必要があるのか、そして中小企業が無理なく始められる予算管理の作り方を解説します。

「前年比〇%」予算の何が問題なのか

前年実績に一定の伸び率を掛けるだけの予算は、作成が簡単な一方で、次のような問題を抱えています。

  • 固定費と変動費を区別していないため、売上が変動した場合の利益への影響が予算に反映されない
  • 季節変動や取引先の発注サイクルといった、その事業特有の要因が数字に織り込まれていない
  • 「なぜその数字になるのか」の根拠が説明できず、予実差異が出ても原因分析につながらない
  • 現場の実感と乖離した数字になりやすく、予算が形骸化する

予算管理の本来の目的は、単に目標数値を置くことではなく、事業計画を具体的な数字に落とし込み、実績との差異から経営課題を早期に見つけることにあります。前年比だけの予算では、この目的を果たせません。

予算管理の始め方——3つのステップ

ステップ1:固定費と変動費に分ける

まず、損益計算書の費用項目を固定費(家賃・人件費・減価償却費など)と変動費(材料費・外注費・仕入原価など)に区分します。これにより、売上予算の変動が利益にどう波及するかを計算できるようになります。

ステップ2:売上予算を積み上げ方式で作る

売上予算は、前年実績に係数を掛けるのではなく、既存顧客の継続受注見込み、新規案件のパイプライン、季節要因を個別に積み上げて作成します。建設業であれば案件ごとの受注確度、製造業であれば主要取引先の発注計画をベースにするなど、業種の実態に即した積み上げが重要です。

ステップ3:固定費・変動費予算を紐づける

売上予算が固まったら、変動費は売上予算に対する比率(変動費率)から算出し、固定費は人員計画・設備投資計画から個別に見積もります。これにより、売上高・変動費・固定費・利益がひとつながりの予算として完成します。

売上予算 - (売上予算 × 変動費率) - 固定費予算 = 利益予算

中小企業が予算管理でつまずきやすい点

よくあるつまずき

  • 予算を年度初めに1回作って終わりにし、期中で見直さない
  • 部門別・案件別に分解せず、会社全体の大きな数字だけで予算を作る
  • 予算と実績を比較する仕組み(月次試算表との突合)がなく、比較自体が行われない
  • 精緻さにこだわりすぎて予算作成に時間がかかりすぎ、翌年から続かなくなる

特に中小企業では、完璧な予算を目指すよりも、まずは固定費・変動費を分けた大まかな年間予算を月割りし、毎月の試算表と突き合わせる運用を継続することの方が重要です。精度は運用を重ねる中で高めていけます。

予算を作った後にやるべきこと

予算は作って終わりではなく、月次で実績と比較し、差異が生じた原因を確認する「予実分析」までがセットです。売上が予算を下回った場合、それが数量の問題なのか単価の問題なのか、変動費率が想定とズレていないかなど、差異の中身を分解して見ることで、初めて経営判断に使える情報になります。予実分析の具体的なやり方は、次回の記事で取り上げます。

予算管理の仕組みづくりはお任せください

予算を作っても実績と比較する運用が続かない」「前年比だけの予算から脱却したい」——当事務所は公認会計士・税理士・CFEの資格を持つ代表が、固定費・変動費の整理から積み上げ型の予算作成、月次の予実比較体制の構築までサポートします。まずは無料相談でお気軽にご相談ください。


石水 秀治(いしみず しゅうじ)

あずさ監査法人にて17年間従事(IPO支援4社)。2025年7月、山梨県甲府市に石水会計事務所を開業。国の認定経営革新等支援機関として、中小企業の会計・法務体制構築を支援。