
予算を作っても、実績と比較して終わりでは意味がありません。「予算に対して売上が90%だった」という結果だけを見て一喜一憂するのではなく、差異がなぜ生じたのかを分解して原因を突き止めることが予実分析の本質です。本記事では、予実分析の基本的な進め方と、差異が出たときに確認すべき着眼点を解説します。
Thank you for reading this post, don't forget to subscribe!予実分析とは何か
予実分析とは、予算(計画)と実績(結果)を比較し、その差異(予実差異)の原因を分析することです。単に差異の金額を確認するだけでなく、「量の問題か、単価の問題か」「一時的な要因か、構造的な要因か」を切り分けることで、初めて次のアクションにつながる情報になります。
予実差異 = 実績 - 予算
予実分析の基本ステップ
ステップ1:差異を項目別に洗い出す
売上高、変動費、固定費、利益といった大項目だけでなく、可能であれば商品別・部門別・案件別に予算と実績を並べ、どこで差異が生じているかを特定します。会社全体の数字だけを見ていると、好調な部門の数字に不振な部門の数字が埋もれてしまうことがあります。
ステップ2:差異を「数量要因」と「単価要因」に分解する
売上の差異は、多くの場合「売れた数量」と「販売単価」の2つの要因に分解できます。この分解を行わずに売上差異だけを見ていると、原因を見誤ります。
数量差異 =(実績数量-予算数量)× 予算単価
単価差異 =(実績単価-予算単価)× 実績数量
| 項目 | 予算 | 実績 | 差異 |
|---|---|---|---|
| 数量 | 1,000個 | 900個 | △100個 |
| 単価 | 10,000円 | 10,500円 | +500円 |
| 売上高 | 10,000,000円 | 9,450,000円 | △550,000円 |

この例では、単価は予算より上がっているにもかかわらず、数量が予算を下回ったことで売上全体はマイナスになっています。数量差異は△1,000,000円(100個×予算単価10,000円)、単価差異は+450,000円(500円×実績数量900個)で、合計すると売上差異の△550,000円と一致します。単価を上げても数量が落ちれば売上は減るという構造が、この分解によって見えてきます。
差異の原因を見るときの着眼点
一時的な要因か、構造的な要因かを見分ける
取引先の発注タイミングのズレや、突発的な受注キャンセルのような一時的要因であれば、翌月以降で挽回できる可能性があります。一方、競合の値下げによる顧客離れや、主要取引先の取引縮小のような構造的要因であれば、予算そのものの見直しや対応策の検討が必要です。差異の原因を「一過性」と「継続性」に分けて考えることが、次の打ち手を決めるうえで重要です。
固定費と変動費、どちらで差異が出ているか
変動費の差異は、多くの場合、売上の増減や仕入価格の変動と連動しています。一方、固定費の差異は、予算段階での見積もりの精度や、計画外の支出(突発的な修繕費など)が原因であることが多く、対応の仕方が異なります。固定費で継続的にマイナスの差異が出ている場合は、来期の予算編成そのものを見直す必要があります。
差異が利益にどれだけ影響しているか
売上の差異だけでなく、限界利益・営業利益ベースでの差異を必ず確認します。売上は予算未達でも、変動費率の改善によって利益は予算を上回っている、といったケースもあり、売上高の差異だけを見ていると経営判断を誤ります。
予実分析でよくある落とし穴
- 差異の金額だけを見て、原因分析(数量要因か単価要因か)まで踏み込まない
- 不利差異(予算未達)ばかりに注目し、有利差異(予算超過達成)の要因を分析しない。有利差異にも、翌期の予算精度を上げるヒントが含まれている
- 月次で一度も比較せず、期末にまとめて確認する(この場合、手遅れになっている可能性が高い)
- 差異の原因を現場に確認せず、数字だけで判断してしまう
予実分析を経営に活かすために
予実分析の目的は、過去の差異を批評することではなく、その原因を踏まえて今後の行動を修正することにあります。差異の原因が一時的なものであれば静観し、構造的なものであれば、値付けの見直しや新規開拓の強化、固定費の圧縮といった具体的な対応策に落とし込みます。また、大きな環境変化が続く場合は、年度予算に固執せず、直近の実績を踏まえて予算そのものを更新する「ローリングフォーキャスト」の考え方も有効です。
石水 秀治(いしみず しゅうじ)
公認会計士・税理士・公認不正検査士(CFE)|認定経営革新等支援機関
あずさ監査法人にて17年間従事(IPO支援4社)。2025年7月、山梨県甲府市に石水会計事務所を開業。国の認定経営革新等支援機関として、中小企業の会計・法務体制構築を支援。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務アドバイスではありません。


