未来会計
〜 過去の数字を「報告」するだけの会計から、未来を「設計」する会計へ 〜
📋 この記事でわかること
- 「未来会計」とは何か・従来の会計とどう違うのか
- 未来会計を取り入れると経営にどんな変化が起きるか
- 具体的な実践ステップと、経営者が確認すべき数字
- 税理士が「未来会計パートナー」として果たす役割
あなたの会社の会計は、「バックミラー」になっていませんか?
車を運転するとき、バックミラーだけを見て走る人はいません。前を向き、行く先を確認しながらハンドルを切るのが当たり前です。
ところが、多くの中小企業の会計は「バックミラーを見ている」状態です。決算書・試算表には過去の出来事しか映っていません。「先月いくら売れたか」「今期の利益はいくらだったか」——これらはすべてすでに起きたことの記録です。
もちろん、過去の数字を正確に記録することは重要です。しかしそれだけでは、会計は「税金を計算するための書類作り」にとどまってしまいます。
そこで注目されているのが「未来会計」という考え方です。
未来会計とは何か
未来会計とは、過去の実績データをもとに将来の経営数値を予測・シミュレーションし、経営判断に活かすアプローチです。「予測会計」「フォワードルッキング会計」とも呼ばれます。
従来の会計が「過去の記録・報告」を目的とするのに対し、未来会計は「将来の設計・意思決定」を目的とします。
▼ 従来の会計
過去会計
決算書・試算表
「何が起きたか」
を記録・報告する
▼ 現状把握
現在会計
月次決算・試算表
「今どうなっているか」
をリアルタイムで把握
▲ 未来会計
未来会計
業績予測・シミュレーション
「これからどうするか」
を数字で設計する
未来会計は、過去会計・現在会計(月次決算)の土台の上に成り立ちます。毎月の数字が正確に記録されていてはじめて、精度の高い将来予測が可能になります。
| 比較項目 | 従来の会計(過去会計) | 未来会計 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 税務申告・実績報告 | 経営判断・将来設計 |
| 時間軸 | 過去(確定した事実) | 未来(予測・シナリオ) |
| 主なアウトプット | 決算書・申告書 | 業績予測・資金計画・シミュレーション |
| 経営への活用 | 問題発生後に気づく | 問題を事前に回避・機会を先取りする |
| 税理士の役割 | 記帳・申告の代行 | 経営パートナー・CFO的役割 |
未来会計が必要とされる理由
なぜ今、未来会計が注目されているのでしょうか。背景には、中小企業を取り巻く環境の変化があります。
① 経営環境の変化スピードが上がっている
物価上昇・人件費の高騰・金利の上昇・デジタル化の加速——これらの変化は、数年前まで「当たり前だった経営の前提」を根底から変えつつあります。年に1回決算書を見るだけでは、こうした変化に対応するスピードが明らかに不足しています。
② 資金調達の場面で「将来性」が問われる
銀行融資・補助金申請・投資家への説明など、あらゆる資金調達の場面で「これからどう成長するか」という将来計画の提示が求められるようになっています。過去の決算書だけでは、こうしたニーズに応えられません。
③ 事業承継・出口戦略を考える経営者が増えている
後継者への承継・M&A・廃業——いずれの選択肢を取るにしても、「会社の現在価値」と「将来キャッシュフローの見通し」が不可欠です。未来会計の視点がなければ、適切な意思決定ができません。
未来会計の具体的な中身
① 着地予測(今期末の利益はいくらになるか)
期の途中(たとえば9月決算の会社が6月末時点)で、「このままいくと今期の最終利益はいくらになるか」を計算するのが着地予測です。
残り3か月の売上・費用を予測し、期末時点の税引前利益を試算します。この数字がわかると、以下のような意思決定ができます。
- 利益が想定より多い → 節税のための設備投資・共済加入を検討する
- 利益が想定より少ない → 原因を分析し、売上強化・コスト削減の手を打つ
- 赤字の見込み → 早急に資金繰り対策・金融機関との相談に動く
💡 着地予測の計算式(イメージ)
期首〜現在の実績利益 + 残月数の予測利益 = 期末着地予測利益
例)上半期(6か月)実績:営業利益 200万円
下半期(6か月)予測:毎月 30万円 × 6か月 = 180万円
→ 今期着地予測:380万円
② 3シナリオシミュレーション
未来は不確定です。「計画どおりにいく場合」「想定より上振れる場合」「下振れる場合」の3つのシナリオを用意することで、どの状況になっても慌てない経営ができます。
📋 ベースシナリオ(想定どおり)
現在のトレンドが続いた場合の予測。最も蓋然性が高いシナリオとして、経営計画・予算の基準とする。
📈 アップサイドシナリオ(好転した場合)
新規顧客獲得・単価上昇・新事業立ち上げなどが成功した場合。追加投資・採用の判断基準として活用。
📉 ダウンサイドシナリオ(悪化した場合)
売上減・コスト上昇・取引先喪失などが重なった場合。最低限維持すべき現金残高・コスト削減の優先順位を事前に決めておく。
③ 中期経営計画(3〜5年の数値計画)
単年度の予測だけでなく、3〜5年先の売上・利益・借入残高・設備投資計画を数値化したものが中期経営計画です。
「3年後に年商2億円を達成するためには、毎年いくらの売上成長が必要か」「設備投資のための借入を5年で返済するには、毎年いくらのキャッシュフローが必要か」——こうした問いに数字で答えることができます。
また、金融機関への融資相談・補助金申請・事業承継の場面では、中期経営計画の提出が求められることも多く、実務上の必要性も高まっています。
④ 資金繰り予測(キャッシュフロー計画)
利益の見通しと同時に、実際の現金がいつ・どれだけ不足するかを先読みするのが資金繰り予測です。利益が出ていても資金が足りなくなる「黒字倒産」を防ぐために不可欠な視点です。
少なくとも3か月先、理想的には12か月先までの現金の増減を月次で予測することで、資金調達のタイミングや借入の必要性を事前に把握できます。
未来会計を実践するためのステップ
未来会計は難しいものではありません。現在の会計の仕組みに少しずつ「将来を見る視点」を加えていくことで実現できます。
Step1
月次決算の仕組みをつくる
未来会計の土台は、正確な月次データです。まず毎月の帳簿を翌月15日前後までに締める習慣をつけます。クラウド会計の導入で入力の手間を大幅に削減できます。月次決算が整っていない段階では、将来予測の精度が低くなります。
Step2
今期の着地予測を毎月更新する
月次試算表が完成したら、「このペースで進むと今期末の利益はいくらになるか」を毎月計算します。最初は税理士と一緒に計算する形でも構いません。この習慣が「先を読む経営」の出発点です。
Step3
年度予算(経営計画)を数値で立てる
次の1年間の売上・費用・利益の目標を月次に分解した「年度予算」を策定します。売上目標だけでなく、粗利率・人件費率・営業利益率などの目標も設定することで、「数字で経営する」文化が生まれます。
Step4
予算と実績を毎月比較・分析する
月次試算表が出たら、予算と実績の差異(差異分析)を確認します。「売上が予算より少ない原因はどこか」「費用が超過している項目はどれか」を毎月分析することで、問題点を早期に特定できます。
Step5
3〜5年の中期計画へ発展させる
単年度の予算管理に慣れてきたら、3〜5年先の成長シナリオを数値で描きます。設備投資計画・借入返済計画・将来の人員計画なども盛り込んだ中期経営計画は、金融機関との交渉・補助金申請・事業承継の場面で強力な武器になります。
税理士は「未来会計パートナー」へ
税理士の仕事は、税務申告書を作ることだけではありません。本来の役割は「数字を通じて経営者の意思決定を支援すること」です。
未来会計を実践するうえで、税理士は以下のような役割を担います。
| 役割 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 着地予測の作成・更新 | 月次試算表をもとに今期末の利益・税額を毎月試算し、経営者に報告します。 |
| 節税シミュレーション | 着地予測の数字をもとに「どの節税策をいつ実行すべきか」を具体的に提案します。 |
| 年度予算の策定支援 | 過去の実績データと業界水準をもとに、現実的な予算の策定をサポートします。 |
| 資金繰り予測の作成 | 売掛・買掛・借入返済・税金納付などを盛り込んだ3〜12か月先の資金計画を作成します。 |
| 中期経営計画の策定 | 3〜5年の成長シナリオを数値化し、融資・補助金・事業承継の場面で活用できる計画書を作成します。 |
| 月次経営会議への参加 | 毎月の試算表の読み解き・予実比較・翌月の方針について、経営者とともに考えます。 |
✅ 「記帳代行・申告だけ」の税理士から「未来会計パートナー」へ
現在の税理士との関係が「決算のときだけ会う」「試算表を送ってもらうだけ」という状態であれば、税理士の活用の仕方を見直す余地があるかもしれません。税理士は「過去を報告する人」ではなく、「未来を一緒に描くパートナー」として活用できます。
まとめ:会計を「過去の記録」から「未来の設計図」へ
未来会計の本質は、「数字で未来を見通し、今すべき行動を決める」ことです。それは特別な大企業だけの話ではありません。
むしろ、経営資源が限られる中小企業こそ、限られたお金・人・時間を「正しい方向」に集中させるために、未来会計の視点が不可欠です。
「今期の利益はいくらになりそうか」「来年の採用は可能か」「3年後に借入を返済し終えられるか」——これらの問いに、感覚ではなく数字で答えられる経営者になることが、未来会計の目指す姿です。
✅ 未来会計の要点まとめ
- 未来会計とは、過去の記録ではなく将来を設計するための会計のこと
- 着地予測・シナリオ分析・中期計画・資金繰り予測が主なツール
- 月次決算の仕組みをつくることが出発点
- 「利益が出そうなとき」に節税策を先手で打てるのが最大のメリット
- 融資・補助金・事業承継のあらゆる場面で数字が武器になる
- 税理士は「申告する人」から「未来を一緒に描くパートナー」へ
📞 未来会計・経営計画の策定はお気軽にご相談ください
「今期の利益がどのくらいになるか知りたい」「中期経営計画を一緒に作ってほしい」「資金繰りの見通しを立てたい」——どんなご相談でも、まずはお気軽にどうぞ。初回相談は無料です。
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石水会計事務所 代表 税理士・公認会計士・公認不正検査士
中小企業の未来会計・経営計画策定を多数支援。「会計を経営に活かす」ことをテーマに、数字でわかる経営のお手伝いをしています。

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