月次決算のすすめ

月次決算のすすめ

〜 決算は年1回では遅すぎる。毎月数字を締めて、経営を変えよう 〜


📋 この記事でわかること

  • 月次決算とは何か・年次決算とどう違うのか
  • 月次決算を導入すると経営にどんな変化が起きるか
  • 月次決算の具体的な進め方と作業の流れ
  • よくある失敗例と、税理士に頼むべき理由

「決算は年に1回」—それでは遅すぎるかもしれませんー

「経営の数字は、税理士に任せて決算のときだけ確認している」——そんな経営者の方は少なくないと思います。しかし、その方法では問題に気づくのが1年後になってしまいます。

たとえばこんなケースを考えてみてください。

  • 決算が終わってみたら、思ったより利益が出ていなかった
  • 税理士から「今年は赤字です」と言われて初めて気づいた
  • 経費がどれくらいかかっているか、ざっくりしか把握していない
  • 銀行に融資を断られたが、理由がよくわからなかった

これらはすべて、「経営の数字をリアルタイムで把握していない」ことから起きる問題です。そこで今回おすすめしたいのが、月次決算の仕組みを会社に取り入れることです。

月次決算とは何か

月次決算とは、毎月末に会計帳簿を締めて、その月の損益・財務状況を確認する作業のことです。年1回の「年次決算」を毎月のサイクルで行うイメージです。

上場企業では月次決算は当然の慣行ですが、中小企業では「年に1回、税申告のために決算書を作るだけ」というケースが多く見られます。月次決算を導入することで、経営判断のスピードと精度が大きく変わります。

比較項目年次決算のみ月次決算あり
数字の把握頻度年1回(決算後)毎月(翌月中旬目安)
問題発覚のタイミング最大12か月後最大1か月後
節税対策の立案期末に慌てて検討通年で計画的に実行
金融機関への信頼決算書のみ提出最新の試算表を随時提示できる
経営判断のスピード感覚・経験に頼りがち数字に基づいた迅速な判断

月次決算を導入すると経営が変わる6つの理由

🚨

売上の落ち込み・コストの異常増加・資金減少などを毎月把握できます。「気づいたときには手遅れ」を防ぎ、小さなうちに手を打てます。

🎯

期中に利益の見込みがわかるため、決算月が近づいてから慌てることなく、設備投資・共済活用・賞与支給などの節税策を計画的に実行できます。

🏦

融資相談の際、最新の月次試算表を持参できると「財務管理がしっかりしている会社」という印象を与え、融資審査に有利に働くことがあります。

💡

「なんとなく儲かっている気がする」から「粗利率が前月比2%下がっている」という具体的な把握に変わります。勘ではなく数字で経営できます。

📈

月次で実績と予算を比較することで、「今月は売上目標の何%達成か」が毎月確認できます。組織全体に数字への意識が生まれます。

🔄

月次で数字を確認し、翌月の方針を立て、実行し、また確認する——このサイクルを毎月回せるようになります。年1回では改善のスピードが12分の1になります。

月次決算の具体的な進め方

月次決算は、毎月末から翌月中旬にかけて以下の流れで進めるのが一般的です。翌月10〜15営業日以内に試算表を完成させることが目安とされています。

月末〜翌月5日

売上・仕入・経費・入出金などのすべての取引を会計ソフトに入力します。クラウド会計を使えば、銀行口座やクレジットカードと連携して自動取り込みが可能です。

翌月5〜7日

帳簿の現金・預金残高と、実際の口座残高・手元現金が一致しているか確認します(残高照合)。ズレがある場合は原因を調査して修正します。

翌月7〜10日

月次決算では、年次決算と同様の「見越し・繰延べ」処理を月次ベースで行います。主な処理は以下のとおりです。

翌月10〜15日

会計ソフトから損益計算書・貸借対照表を出力し、数値を確認します。前月・前年同月と比較して、異常な変動がないか確認することが重要です。

翌月15日前後

試算表をもとに、売上・利益の達成状況、課題、翌月に向けた対策を検討します。税理士が顧問として関与している場合は、このタイミングで月次ミーティングを行い、数字の解説と経営アドバイスを受けることができます。

月次決算で確認すべき3つの指標

月次試算表が出来上がったら、すべての数値を眺める必要はありません。まず以下の3つの指標を毎月チェックする習慣をつけましょう。

粗利率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100(%)

本業で稼ぐ力を示す最も基本的な指標です。前月・前年同月と比較して、数値が低下していれば仕入れコストの上昇・値引き販売の増加・不採算案件の発生などが疑われます。

営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100(%)

粗利から人件費・家賃・広告費などの固定費を引いた「本業の収益力」を示します。粗利率は高いのに営業利益率が低い場合、固定費(とくに人件費)の膨張が疑われます。

損益計算書の「利益」だけでなく、実際の手元資金の推移を毎月確認することが重要です。利益が出ていても現金が減っている場合は、売掛金の回収遅延・借入金返済・設備投資などが原因として考えられます。前月末からの増減を必ず確認してください。

💡 前月・前年同月と比較するのがコツ

単月の数値だけを見ても判断しにくいことがあります。「先月と比べてどうか」「去年の同じ月と比べてどうか」という視点で見ると、季節変動・トレンドの変化が見えてきます。異常な変動があったときが、手を打つタイミングです。

月次決算の導入前後で経営はこう変わる

  • 売上・利益は「だいたい」しか把握していない
  • 経費がどれくらいかかっているか不明確
  • 決算月に税理士から数字を聞いて初めて驚く
  • 節税の相談が決算直前になり、選択肢が狭い
  • 赤字になっていても数か月気づかない
  • 銀行への説明が決算書1枚だけで不十分
  • 毎月、売上・粗利・利益を数字で把握している
  • コストの増加に翌月中には気づいて対処できる
  • 「今期は利益がいくらになりそうか」が予測できる
  • 期中から計画的に節税策を実行できる
  • 資金繰りの悪化を事前に察知して手を打てる
  • 最新の試算表を常に銀行・取引先に提示できる

月次決算でよくある失敗と対策

Q
入力が遅れて「月次」にならない
A

決算が遅れる主な原因は、領収書や請求書の等の必要な証憑が、集まらないことが原因となることが多いです。このため、決算スケジュールを作成し、各種証憑の提出期限を社内に周知することが重要です。

また、クラウド会計を導入し、銀行口座・クレジットカードと連動させることで、入力の手間を大幅に削減できます。

Q
月次の仕訳処理が不正確で、年次決算と大きくズレる
A

減価償却・前払費用・棚卸などの月次仕訳が正確に行われていないと、月次の利益が実態と大きくズレ、経営判断を誤る原因になります。

月次仕訳のルールを税理士と事前に確認し、月次決算手順をマニュアル化するとともに、決算チェックリストを作成し、抜け漏れがないかをチェックすることが重要です。

一方で、月次決算はあくまで、会社内部の報告のため、やらない又は簡便的な処理をすることを決めることも重要です。

Q
数字を見るだけで「活かせていない」
A

まずは、出来上がった数値を眺めてみましょう。

そのうで、税理士との月次ミーティングを設けて「この数値の変化はなぜか」「来月どうすべきか」を必ず話し合う習慣をつけましょう。数字を見るだけでなく、意思決定につなげることが月次決算の本来の目的であることを意識することが重要です。

税理士に月次顧問を依頼するとどう変わるか

「月次決算は自分でやるもの」と思われがちですが、税理士が月次顧問として関与することで、作業の正確性・スピード・活用度が大きく変わります。

✅ 月次顧問と申告のみの違い

税理士との契約には「申告のみ(年1回の決算・申告書作成)」と「月次顧問(毎月の関与+申告)」があります。申告のみの契約では、経営数値のチェックや節税提案は行われません。月次決算を活かすには、月次顧問契約が最適です。顧問料はかかりますが、節税効果・経営改善効果で十分に回収できることがほとんどです。

まとめ:月次決算は「経営の健康診断」を毎月受けること

年に1回の決算は、1年に1回しか受けない健康診断のようなものです。問題が見つかったとき、すでに手遅れになっている可能性があります。

月次決算は、毎月「経営の健康状態」を確認することです。小さな異変を早期に発見し、迅速に手を打つことで、会社を健全に成長させていくことができます。

「どこから始めればいいかわからない」「今の帳簿のやり方で月次ができるか不安」——そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。現状をヒアリングしたうえで、御社に合った月次決算の仕組みづくりをご提案します。

まとめ:月次決算のポイント

  • 毎月の試算表で、問題を最大1か月以内に発見できる
  • 期中からの節税計画・資金繰り管理が可能になる
  • 翌月15日前後を目安に試算表を完成させる
  • 確認すべき3指標:粗利率・営業利益率・現預金残高
  • 数字を「見るだけ」で終わらせず、必ず経営判断に活かす

石水会計事務所 代表 税理士・公認会計士・公認不正検査士      
中小企業の月次決算・経営改善支援を多数手がける。「決算書を経営に活かす」ことをテーマに、数字でわかる経営のお手伝いをしています。