会社設立 / 起業 / 税務・登記
法人設立手続きガイド
—株式会社・合同会社の設立をステップごとに徹底解説ー
定款作成から登記・税務届出まで、全工程の流れと費用をまとめて解説
個人事業から法人化を検討している方、またはこれから新たに会社を設立しようとしている方へ。法人設立には「定款作成」「公証人認証(株式会社のみ)」「資本金の払込」「法務局への登記申請」「税務署への届出」など、複数のステップが順番に絡み合っています。本記事では株式会社・合同会社の比較から各手続きの具体的な内容・必要書類・費用まで、税理士・認定支援機関の立場からわかりやすく解説します。
📋 目次
- 株式会社と合同会社——どちらを選ぶべきか
- 設立前に決めるべき基本事項
- STEP 1 定款の作成・認証
- STEP 2 資本金の払込み
- STEP 3 法務局への設立登記申請
- STEP 4 税務署・都道府県・市区町村への届出
- STEP 5 社会保険・雇用保険の届出
- 設立費用の比較(株式会社 vs 合同会社)
- 設立後すぐに行う経理・税務の初期設定
- まとめ——設立手続きチェックリスト
第1章:株式会社と合同会社——どちらを選ぶべきか
日本で最もよく利用される法人形態は株式会社と合同会社(LLC)の2つです。どちらも「有限責任」であり出資者は出資額の範囲内でのみ責任を負います。社会保険への強制加入や法人税の適用も同様です。主な違いを整理します。
🏢 株式会社
設立費用:登録免許税15万円+定款認証5万円等で約22〜30万円
対外信用力:高い。大企業・金融機関との取引で有利
資金調達:株式発行による出資募集が可能
機関設計:株主総会・取締役会等の設置が必要(小規模は簡略可)
利益配分:出資比率に応じた配当が原則
決算公告義務:あり(官報等への掲載が必要)
🏬 合同会社(LLC)
設立費用:登録免許税6万円のみで約8〜14万円
対外信用力:株式会社より低い場合がある
資金調達:株式発行不可。社員(出資者)の追加のみ
機関設計:不要。社員全員が業務執行権を持つ(定款で別途設定可)
利益配分:出資比率に関係なく定款で自由に設定可
決算公告義務:なし
💡 どちらを選ぶべきか——判断の目安
- 株式会社を選ぶ場合:将来的に融資・出資を受けたい、大企業・金融機関との取引がメイン、将来的に上場(IPO)を目指したい
- 合同会社を選ぶ場合:設立費用を抑えたい、少人数・フレキシブルな経営が前提、個人事業の法人化で形式より実質を重視
第2章:設立前に決めるべき基本事項
| 決定事項 | 内容・注意点 |
|---|---|
| ①会社名(商号) | 「株式会社」「合同会社」の文言を必ず含める。同一住所に同一商号の登記はできない |
| ②本店所在地 | 自宅・レンタルオフィス・バーチャルオフィスも可。都道府県・市区町村まで確定する |
| ③事業目的 | 定款に記載した事業のみ行える。許認可が必要な事業は目的に明記が必要。幅広く記載するのが一般的 |
| ④資本金の額 | 1円以上(実質的には100万円前後が目安)。1,000万円未満なら設立後2期は消費税免税の可能性あり |
| ⑤役員構成 | 株式会社は取締役1人以上が必要(1人会社でも可)。任期は最長10年。報酬は事業年度開始後3か月以内に決定 |
| ⑥事業年度(決算月) | 原則として自由に設定可。設立直後の事業年度が短すぎないよう注意 |
| ⑦法人印鑑 | 代表者印(実印)は登記申請に必須。会社印・銀行印・認印のセット(約2〜3万円)の作成を推奨 |
⚠️ 資本金1,000万円の壁——消費税の免税に注意
資本金が1,000万円以上の法人は、設立1期目から消費税の課税事業者になります。消費税の免税を享受したい場合は資本金を1,000万円未満に設定してください。また、設立1期目の上半期(6か月)の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超えると2期目から課税事業者になる点にも注意が必要です。
第3章:STEP 1 定款の作成・認証
株式会社:定款を作成後、公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。電子定款(PDF形式)にすると収入印紙代4万円を節約できます。
合同会社:定款の作成のみ。公証人認証は不要です。社員全員が署名・押印します。
株式会社の定款認証費用
| 費用項目 | 紙の定款 | 電子定款(PDF) |
|---|---|---|
| 収入印紙代 | 40,000円 | 0円(不要) |
| 公証人認証手数料 | 50,000円 | 50,000円 |
| 定款謄本代 | 約2,000円 | 約2,000円 |
| 合計 | 約92,000円 | 約52,000円 |
✅ 電子定款で4万円節約
電子定款を利用すると収入印紙代4万円が不要です。電子定款の作成にはマイナンバーカード(電子署名)が必要ですが、税理士・司法書士に依頼すれば電子定款で作成してもらえる場合があります。
定款の主な記載事項
| 記載区分 | 内容 |
|---|---|
| 絶対的記載事項(必須) | 目的・商号・本店所在地・設立に際して出資される財産の価額・発起人の氏名・住所(株式会社) |
| 相対的記載事項 | 現物出資・財産引受け・発起人の報酬・設立費用等(記載がないと効力が生じない事項) |
| 任意的記載事項 | 事業年度・役員の人数と任期・株式譲渡制限・株主総会の招集通知期間の短縮等 |
第4章:STEP 2 資本金の払込み
定款認証後、発起人(出資者)の個人の銀行口座に資本金を振り込みます。法人口座はこの時点では存在しないため、まず個人口座で受け取ります。
- 振込先は発起人(代表者)の個人口座
- 振込明細が記載された通帳コピー(残高証明書でも可)が登記申請の添付書類になる
- 発起人が1人で全額出資する場合は、自分の口座に自分で振り込む形になる
資本金の払込みがあったことを証明する「払込証明書」を作成し、通帳のコピーと合綴したものを登記申請に添付します。
第5章:STEP 3 法務局への設立登記申請
本店所在地を管轄する法務局(登記所)に必要書類一式を提出します。申請した日が法人の設立日になります。
申請から登記完了まで通常1〜2週間程度かかります。登記完了後、登記事項証明書(法人の謄本)を取得できます。
登記申請書類一覧(株式会社)
| 書類名 | 作成者・入手先 |
|---|---|
| 登記申請書 | 自分で作成(法務局の書式を使用) |
| 定款(認証済みのもの) | 公証役場で認証を受けたもの |
| 発起人決定書(または発起人会議事録) | 自分で作成。本店所在地・取締役の氏名・就任承諾等を記載 |
| 取締役就任承諾書 | 自分で作成。取締役の記名・押印 |
| 代表取締役の印鑑証明書 | 市区町村窓口またはコンビニで取得(発行後3か月以内) |
| 払込証明書(通帳コピー合綴) | 自分で作成+通帳コピー |
| 登録免許税(収入印紙または電子納付) | 株式会社:15万円以上(資本金×0.7%、下限15万円) |
| 代表者印の印鑑届書 | 法務局の書式。会社の実印を登録する届出 |
登録免許税
| 法人形態 | 登録免許税 | 最低額 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 資本金の0.7% | 15万円 |
| 合同会社 | 資本金の0.7% | 6万円 |
第6章:STEP 4 税務署・都道府県・市区町村への届出
法人設立後は税務署・都道府県税事務所・市区町村役場へ届出書を提出します。提出期限があるものもあるため、設立登記完了後速やかに手続きを進めてください。
税務署への主な届出書類
| 届出書類 | 提出期限 | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立後2か月以内 | 会社の基本情報を届け出る。登記事項証明書・定款のコピーを添付 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立後3か月以内または最初の事業年度終了日のいずれか早い日 | 欠損金の繰越控除(最長10年)・少額減価償却の特例等が受けられる。ほぼ必須 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設後1か月以内 | 役員報酬・給与を支払う場合に必要。源泉徴収事務の開始届出 |
| 源泉所得税の納期の特例申請書 | 任意のタイミングで申請可 | 従業員10人未満の事業所に適用可。源泉税の納付を年2回(1〜6月分は7月、7〜12月分は翌1月)にできる |
| 棚卸資産の評価方法の届出書 | 最初の事業年度の確定申告期限まで | 棚卸資産を持つ場合に提出。期限を過ぎると法定評価方法が自動適用される |
| 減価償却資産の償却方法の届出書 | 最初の事業年度の確定申告期限まで | 定額法・定率法のいずれかを選択。期限を過ぎると法定償却方法(定率法)が適用 |
✅ 青色申告承認申請書は必ず提出する
法人の青色申告は欠損金の10年繰越控除・30万円未満の少額減価償却資産の一括損金算入(中小企業特例)など多くの税務上の特典をもたらします。提出期限(設立後3か月以内)を逃さないよう、設立直後に提出することをお勧めします。
第7章:STEP 5 社会保険・雇用保険の届出
法人は原則として役員のみであっても社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が強制されます。また、従業員を雇用する場合は雇用保険・労災保険の手続きも必要です。
主な届出一覧
| 届出先 | 提出書類 | 期限 |
|---|---|---|
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 設立(適用事業所となった日)から5日以内 |
| 年金事務所 | 健康保険 被扶養者(異動)届 | 役員・従業員に扶養家族がいる場合 |
| 労働基準監督署 | 労働保険 保険関係成立届 | 従業員雇用日から10日以内(従業員雇用時のみ) |
| ハローワーク | 雇用保険 適用事業所設置届 雇用保険 被保険者資格取得届 | 従業員雇用日の翌日から10日以内(従業員雇用時のみ) |
⚠️ 役員のみでも社会保険は強制加入
「従業員がいないから社会保険に入らなくていい」と考える経営者がいますが、法人(株式会社・合同会社)は役員1人だけでも社会保険(健康保険・厚生年金)への強制加入が義務付けられています。加入しないと、年金事務所から加入指導・最大2年間の遡及適用・延滞金が発生するリスクがあります。設立後速やかに手続きしてください。
第8章:設立費用の比較(株式会社 vs 合同会社)
🏢 株式会社の設立費用
| 定款の収入印紙代 | 0円(電子定款)〜40,000円 |
| 定款の公証人認証手数料 | 50,000円 |
| 定款謄本代 | 約2,000円 |
| 登録免許税 | 150,000円〜(下限15万円) |
| 登記事項証明書取得 | 約600円/通 |
| 法人印鑑セット(任意) | 20,000〜50,000円 |
合計目安:約22〜30万円
(電子定款の場合は約18〜26万円)
🏬 合同会社の設立費用
| 定款の収入印紙代 | 不要(公証人認証不要) |
| 公証人認証手数料 | 不要 |
| 登録免許税 | 60,000円(下限6万円) |
| 登記事項証明書取得 | 約600円/通 |
| 法人印鑑セット(任意) | 20,000〜50,000円 |
合計目安:約8〜14万円
第9章:設立後すぐに行う経理・税務の初期設定
法人銀行口座の開設
登記完了後、登記事項証明書と定款を持参して法人用の銀行口座を開設します。都市銀行・地方銀行・ネット銀行など選択肢は多様ですが、審査に数日〜数週間かかる場合があります。設立後の資金繰りを考えると早めに動くことが重要です。
会計ソフトの導入
法人は原則として複式簿記での記帳が求められます。会計ソフトを導入し、設立日から記帳を開始します。勘定科目・事業年度・消費税の設定を初期に正しく行っておくことが重要です。
設立時の主な仕訳
| 取引 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|---|
| 資本金の払込み | 普通預金 XXX 円 | 資本金 XXX 円 | 発起人より払込み |
| 設立費用の支払い (登録免許税等) | 創立費 XXX 円 | 普通預金 XXX 円 | 登録免許税・定款認証費等(繰延資産として計上可) |
| 役員報酬の支払い | 役員給与 XXX 円 預り金(源泉税)X 円 | 普通預金 XXX 円 | 代表取締役報酬(源泉徴収後) |
⚠️ 役員のみでも社会保険は強制加入
「従業員がいないから社会保険に入らなくていい」と考える経営者がいますが、法人(株式会社・合同会社)は役員1人だけでも社会保険(健康保険・厚生年金)への強制加入が義務付けられています。加入しないと、年金事務所から加入指導・最大2年間の遡及適用・延滞金が発生するリスクがあります。設立後速やかに手続きしてください。
第10章:まとめ——設立手続きチェックリスト
設立前
- 株式会社・合同会社の選択を決定した
- 商号(会社名)を確定した
- 本店所在地を決定した
- 事業目的を検討・確定した
- 資本金の額を決定した(消費税免税を考慮し1,000万円未満を検討)
- 役員構成・株主構成を確定した
- 事業年度(決算月)を決定した
- 法人印鑑(代表者印)を発注・取得した
STEP 1〜3(設立登記まで)
- 定款を作成した
- 【株式会社】公証役場で定款の認証を受けた(電子定款を推奨)
- 発起人(代表者)の個人口座に資本金を払い込んだ
- 払込証明書と通帳コピーを合綴した
- 登記申請書類一式を作成・収集した
- 法務局に設立登記申請書を提出した(この日が設立日)
- 登記完了後、登記事項証明書(謄本)を取得した
STEP 4〜5(設立後の届出)
- 税務署に法人設立届出書を提出した(設立後2か月以内)
- 税務署に青色申告の承認申請書を提出した(設立後3か月以内)
- 税務署に給与支払事務所等の開設届出書を提出した(1か月以内)
- 都道府県税事務所・市区町村に法人設立届出書を提出した
- 年金事務所に社会保険(健康保険・厚生年金)の新規適用届を提出した(5日以内)
- 【従業員を雇用する場合】ハローワーク・労働基準監督署への雇用保険・労災保険届出を行った
設立後の経理・税務初期設定
- 法人銀行口座を開設した
- 会計ソフトを導入し、設立日から記帳を開始した
- 役員報酬を事業年度開始後3か月以内に決定した
- 源泉所得税の納期の特例申請書を提出した(10人未満の場合)
- 税理士・顧問契約を締結し、月次処理・決算をサポートしてもらえる体制を整えた
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